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北 潔
長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科 教授 / 研究科長
創薬に関わる人々は「夢追い人」である。この世に人類が生き続ける限り、疾病は無くならない。そしてその治療に必要な薬剤は私達が自然から見出し、またみずから合成してきたものである。21世紀に入り、世界はますます複雑になり、創薬の対象となる疾病もこれまでの感染症や癌などに加え、生活習慣病、神経や精神疾患など多岐にわたってきている。このような状況は創薬に携わる研究者にとって真の腕の見せ所であり、また生き甲斐でもある。「どのような疾病に対し、どのような戦略によって新しい薬剤を創っていくのか」は、今後の創薬にとって極めて重要な問題である。
基調講演をさせて頂く日本渡航学会の第25回学術集会が開催される8月21日、22日、日本そして世界の新型コロナ感染症の状況はどの様になっているだろうか。私は旅行が大好きだ。そして海外が大好きだ。アサド(焼肉料理)とワインに魅せられて赴任したパラグアイで見た数々の寄生虫症が私を感染症学の研究者へと導いてくれた。私達は「動物」である。動く事が基本の生物である。この動きの止まった今の世界を何とかしようとする私達の取り組みについて紹介したい。
<略歴>1973年に東京大学薬学部の卒業研究で安楽泰宏助教授(当時)から大腸菌の呼吸鎖酵素「チトクロームb」の研究テーマをいただき、電子伝達系の研究を50年近く続けている。学位取得後、東京大学理学部助手として大腸菌の研究を続けていたが、1983年順天堂大学医学部寄生虫学教室へ異動し故大家裕教授のもとで寄生虫ミトコンドリア呼吸鎖の研究を開始、東京大学・医科学研究所(寄生虫研究部)、医学系研究科(国際保健学専攻)を経て2015年より現職。南米パラグアイでのJICA医療協力プロジェクトの経験が現在の「基礎生命科学を基盤とする感染症の創薬研究」に繋がっている。